階段に手すりを取り付ける理由
階段に手すりを取り付ける理由として、「法律で決められている」「転落や事故を防止する」「高齢者や要介護者の歩行を助ける」の3つが挙げられます。
法律で決められている
建築基準法では、階段には手すりを取り付けることが義務付けられています(ただし、2000年以前に建てられた住宅に関しては手すりの設置義務はありません。) 。床から1メートル以下の階段には手すりの設置義務はありません。対象となるのは高さが1メートル以上の階段です。室内で1階から2階に登る階段であれば、1メートル以下ということはないはずです。
手すりの高さ自体は自由に決められるため、利用する人にあわせて決めることをおすすめします。
建築基準法施行令第25条では、階段の手すりについて以下のように定められています。
第二十五条 階段には、手すりを設けなければならない。
2 階段及びその踊場の両側(手すりが設けられた側を除く。)には、側壁又はこれに代わるものを設けなければならない。
3 階段の幅が三メートルをこえる場合においては、中間に手すりを設けなければならない。ただし、けあげが十五センチメートル以下で、かつ、踏面が三十センチメートル以上のものにあつては 、この限りでない。
4 前三項の規定は、高さ一メートル以下の階段の部分には、適用しない。
引用:「建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号)」(e-GOV法令検索)
転落や事故を防止する
家の中でよく起こる事故のひとつに「階段からの転落」があります。階段に手すりを付けることで、転落による事故を防ぐことができます。
小さな子どもや高齢者をはじめ誰しも、階段でつまずいたり滑ったりすることはあるでしょう。そのような場合にすぐに掴まれる手すりがあれば、怪我を回避できる可能性が高まるのです。
高齢者や要介護者の歩行を助ける
足腰の機能が衰えてくる高齢者や、体が不自由な要介護者にとって、毎日の階段の上り下りは大きな負担になります。
高齢者や要介護者が階段の手すりを活用することで、体のバランスを取りやすくなり負担を軽減できます。階段の両側に手すりを設置できれば、なお安心です。
階段に手すりを取り付けにかかる費用の相場
一般的な住宅で用いられている階段の形は3種類あります。形によって費用相場は異なりますので、各階段の特徴とともに値段を確認していきましょう。
ここからは一般的な手すりの部品を壁に直接取り付ける場合の相場を紹介します。
なお、取り付け費用は階段の長さや取り付ける壁の状態、手すり部品、地域によっても大きく変わってきます。
停電時や夜間の安全性を高める目的で足元を照らすLED手すりのような機能的な手すりを取り付ける場合は費用が高めになるので、業者にしっかりと確認しておきましょう。
また階段の手すりは壁のどの部分にでも取り付けられるわけではありません。手すりを直接つけられない場合があります。壁の下地と呼ばれる柱の部分に金具を取り付けなければ強度が足りないため危険です。
もしちょうど良い場所に下地がない場合は一度補強板を壁に取り付けてから、その上に手すりを設置します。補強が必要な場合は、部品代や手間が増えるため値段は相場よりも上がります。
直階段に取り付ける費用の相場
直階段とは途中に踊り場がなくまっすぐに伸びている階段です。住宅用階段としては最も普及しています。
業者に直階段の手すり取り付けを依頼した場合の目安が以下です。
部品と工事費込みで4~7万円程度
手すりを直線的に設置するだけなので安価な傾向です。
かね折れ階段(L字型階段)に取り付ける費用の相場
L字階段に手すりを取り付ける費用は以下です。
部品と工事費込みで4万6000~9万円程度
途中に踊り場のある階段のうち、踊り場でL字に曲がるものをL字階段またはかね折れ階段といいます。踊り場部分の長さが増えるため、直階段より費用は高くなります。
折り返し階段(U字型階段)に取り付ける費用の相場
U字階段への手すり取り付け相場は以下になります。
部品、工事費込みで7万5000〜15万円程度
U字階段はL字階段と同様に途中に踊り場があり、180度折り返すタイプの階段です。折り返し階段とも呼ばれます。
折り返している形のため3種類の中で最も長い手すりが必要です。費用もその分高額となります。
ホームセンターで購入して取り付ける自分で場合
階段の手すりは、DIYをして自分で取り付けることも可能です。部品はホームセンターやインターネット通販などを利用して購入できます。
ホームセンターで購入して取り付けるときの費用相場
必要な部品と価格相場は以下のとおりです。
手すり本体…2mの棒1本あたり3000~8000円、4mの棒1本あたり4000~1万5000円
・手すりエンドブラケット
手すり棒の両端に取り付ける部品…1個あたり700~5000円
・手すり中間ブラケット
手すりがしならないように手すり棒の中間に付ける部品…1個あたり600~2000円
・手すりジョイント
手すり棒同士をつなげる部品…1個あたり500~3000円
・手すりジョイントブラケット
手すり棒同士をつなげつつ壁への固定の役割も担う部品…1個あたり1000~6000円
一般的な部品でそろえた場合、全部で4万円程度に収まるでしょう。
ただし、階段の手すりは安全性が重要なため、壁の下地や適切なブラケット設置のための位置確認がとても大切です。
労力と費用に加えて専門的知識も必要であることから、階段の手すり設置は業者に依頼することをおすすめします。
安全性を考えるなら業者に依頼する
階段の手すり設置を業者に依頼した方が良い理由は、労力や費用面のほか安全面が挙げられます。階段の手すりは手で掴むことで滑り落ちないようにする以外にも、体を支える役目もあります。
専門的な知識や技術をもたない人が階段の手すりを取り付けた場合、取り付け方や位置によっては体を支える本来の役目が機能しない可能性があります。また、しっかり取り付けられずに、手すりごと落下してしまうおそれもあるので注意が必要です。
とくに、高齢者や要介護者の方と同居している家庭では専門業者に依頼することをおすすめします。
手すりの取り付けに使える助成金・補助金
要件を満たしていれば階段の手すりを取り付けるために使う補助金を受給できます。補助金の種類と要件を確認していきましょう。
介護保険制度
介護保険に加入している人のうち介護サービスを利用できる人は、住宅改修制度を利用すると取り付け費用が助成されます。介護保険は満40歳以上であれば、すべての人が加入しています。
介護サービスを利用できる人というのは年齢により2種類に分かれます。
・40歳~64歳…40歳~64歳の方のうち、慢性関節炎リウマチ、パーキンソン病、がん末期など特定の16種類の病気が理由で、介護や支援を必要としている方です。
介護保険の住宅改修制度を利用すると、かかった工事費用の1割負担で手すりを取り付けられます。工事費用の上限は20万円なので、最大18万円が助成されます。
なお、住宅改修制度の助成は一度に使い切る必要はありません。手すりに利用した残りの金額を段差の解消などほかの住宅改修に使えます。
介護保険サービスを利用するには事前の手続きが必要です。対象になりそうな方は市町村の担当部署や地域包括支援センターに相談してみましょう。
地方自治体の補助金
住んでいる市町村によっては独自の介護リフォーム支援サービスを利用できる場合があります。
例えば、東京都の江戸川区では介護認定を受けている60歳以上の方、身体障害者手帳が交付されている介助が必要な60~64歳までの方を対象に、改造費用上限200万円まで助成しています。
お住まいの自治体で介護リフォームへの助成が実施されていないか問い合わせてみると良いでしょう。
工事費用の上限額や助成割合は自治体によって異なります。また、本人や家族の所得によって変わることもあるので、自治体の福祉課など担当部署へ相談してみましょう。
減税制度
手すりの取り付けなどバリアフリーを目的としたリフォームなどの改修工事を行った場合、要件を満たせば税金上の優遇を受けられる場合があります。
一定のバリアフリー改修を行った場合に利用できる減税措置は、所得税の控除と固定資産税の減額の2種類です。
所得税の減額措置には「住宅ローン減税」「特定のリフォームに対する減税」のふたつの制度があります。
・住宅ローン減税
リフォームに際して住宅ローン、リフォームローンを組んだ場合に利用できます。
減税率や対象期間については、改定されることがあるため注意が必要です。2022年以降のリフォームにおいては「年末時点のローン残高×0.7%」で控除額を計算します。(2023年3月現在の情報)
控除額の上限は年間14万円、控除期間は最大10年間となるため、総額は最大140万円という計算になります。
参照:「住宅ローン減税制度について」(国土交通省)
・特定のリフォームに対する減税
耐震改修や省エネ改修といった特定のリフォームをする際に受けられます。
対象となるのは「標準的な工事費用」として国土交通省が定めた金額が基準です。
控除限度額は対象工事によって異なります。たとえば、バリアフリーリフォームの場合は200万円、三世代同居リフォームは250万円となっています。
参照:「令和4年度税制改正の大綱」(財務省)
所得税控除には、改修費用に住宅ローンを使用した場合に年末ローン残高の1~2%が5年間控除される「ローン型減税」があります。さらに、住宅ローンの有無にかかわらず工事費用の10%(上限あり)が控除される「投資型減税」と上述で紹介した「住宅ローン減税」があり、3つのうちいずれかを選びます。
また、バリアフリーリフォームの場合は年齢に関する条件が設けられています。本人が50歳以上または65歳以上の同居親族がいることが条件です。65歳以上の人がバリアフリー改修を行った場合には、住宅に課税される固定資産税が減税される制度もあります。
固定資産税の減額は家屋面積100m2相当までに対して3分の1が減額されます。
どの減税措置も年齢、介護認定や障害の有無、年収、住宅の床面積、居住年数などの条件がそれぞれ決まっているため、管轄の税務署で確認しましょう。
階段に手すりを取り付ける際のポイント
階段の手すりの取り付けは何より安全性と利便性が重要です。せっかく取り付けたのに、使いにくかったりグラグラしたりしていてはいけません。
階段手すりを取り付ける際に気をつけたいポイントを見ていきましょう。
柔軟な対応ができる業者を選ぶ
手すりの取り付け工事はリフォーム会社に依頼するというイメージがあるかもしれませんが、場合によっては高額になるので業者選びは慎重にしましょう。
階段の形状はお家によって異なるため、状況を確認した上で柔軟に一軒一軒に合わせた対応をしてくれる業者がおすすめです。
また階段は転倒が起こりやすい場所なので、安全性を確保するためにもすぐに対応してくれる業者を選ぶと良いでしょう。
取り付ける高さに注意する
使いやすい手すりを取り付けるためには設置する高さに注意しましょう。一般的に、階段の床部分から75~80cmの高さが適しているといわれています。
ただし、介護が必要な方など使う人が決まっているのであれば、その方の使いやすい高さに合わせて取り付けると良いでしょう。
補強板を設置する場合は、広めの板を使用すると、あとから高さや位置の変更がしやすいため便利です。
階段の両側に手すりをつける
手すりは、上り降りどちらでもより力が入るほうの手で支えられるように、できるだけ両側に取り付けましょう。
階段は上るときよりも降りるときのほうが危険です。もし片側にしか付けないのであれば、降りるときに利き手側になるように手すりを付けると良いでしょう。
まとめ
一般住宅の階段は主に直階段、L字階段、U字階段の3種類が用いられています。階段の形状により手すりの取り付け費用異なりますが、4万~15万円程度で設置できると考えておくと良いでしょう。
介護が必要な方がご家族にいれば、補助金を受けられる可能性もあります。また所得税や固定資産税の減税措置も取られています。
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