屋根の「葺き替え」とは?
屋根の葺き替えは、既存の屋根や下地をすべて新しいものに取り替える工事のことです。屋根の損傷や劣化により、塗装や補修工事では対応できない場合に葺き替え工事が行われます。
葺き替え工事は、屋根全体を新しくする工事と、損傷の激しい部分だけを新しいものに取り替える工事のふたつに分かれます。
また、屋根のリフォームには、葺き替え以外にも「カバー工法(重ね葺き)」という方法があります。
カバー工法は既存の屋根の上に新しい屋根を乗せる方法です。既存の屋根を取りのぞいたり撤去したりする手間がかからないため、葺き替えよりも費用を抑えられます。
数年後に取り壊しが決まっている建物や、全面的なリフォームを望まない場合は、カバー工法を選択すると良いでしょう。
ただし、屋根の素材や形状によってはカバー工法ができないケースもあるため、確認しましょう。
そのほかにも、カバー工法は屋根の重みが増すため、地震が起きたときにほかの建物より崩れやすくなる可能性も出てきますので、業者と相談して適切な工法を選択しましょう。
屋根の葺き替えを検討する目安
生活の中で屋根にのぼる機会はめったにないため、破損や劣化がわかりにくい場所といえます。そのため、屋根の損傷に気づいたときには、すでに損傷の具合が深刻になっているケースも珍しくありません。
では、どのような状態になったときに屋根の葺き替えが必要になるのでしょうか。
この項目では、葺き替えを検討しなければならない目安を紹介します。自宅の状況に当てはまるところがないかチェックしてみてください。
天井にカビやシミが増えた
天井にカビやシミが増えたとき、屋根の損傷によって雨漏りが発生している場合があります。
雨漏りを放置していると、天井裏でカビが大量に発生したり、柱や梁が水分を含んで腐食したりして建物全体が損傷してしまいます。
カビはアレルギー性鼻炎や気管支ぜんそくの原因となるため、家族の健康にも影響を与えかねません。また建物全体が損傷してしまうと、修復のために大がかりな工事が必要となってしまうでしょう。
そのほかにも、雨漏りによって漏電や感電を起きてしまうと火災の危険性も出てきます。このような被害を防ぐためにも、雨漏りが疑われる場合は早めに葺き替えを検討しましょう。
築年数が15年を超えている
屋根の耐用年数は素材によって異なりますが、築年数が10年を過ぎたあたりから劣化がはじまります。
さらに、屋根は強い日差しや雨風の影響を直接的に受けているため、塗装や補修を定期的に行わないと早く寿命を迎えてしまう可能性があります。
そのため、築年数が15年を超えていて、これまでにメンテナンスを行ったことがなければ、屋根の劣化が進んでいる可能性あります。
屋根にのぼったときにフカフカしたり柔らかくなっていたりする場合は、屋根の下地材である野地板まで損傷している恐れがあるため、葺き替えを検討した方が良いでしょう。
屋根を触ったときに白い粉がつく
屋根を触ったときに白い粉がついてくることを「チョーキング」といいます。チョーキングは塗膜が劣化することで起きる現象です。
塗膜とは塗料を塗って固まったときに作られる膜のことで、雨風から屋根を保護する役割をもっています。
チョーキングを早期に発見した場合は、塗装することで塗膜の劣化を防げるでしょう。
しかし、チョーキングに気づくのが遅れたり放置してしまったりすると屋根の劣化が進んでしまうため、葺き替えの検討が必要になります。
屋根に苔が生えてきている
劣化した屋根は防水性が落ちているため、雨水や湿気を吸収して苔が生えることがあります。
屋根に苔が生えているのを見つけたら、すぐに除去できれば問題ありません。しかし、気づくのが遅れると苔が屋根に根付いてしまい、屋根は割れやすくなり強度も落ちてしまうでしょう。
また苔が生えると、屋根は常に水分を含んだ状態になります。その結果、内部の下地材まで腐食してしまうと、葺き替えが必要になるのです。
瓦が欠けたりひび割れたりしている
耐久性の高い瓦でも、台風や強風で飛んできたものがぶつかったり、雪の重みに負けてしまったりすると、欠けやひび割れが起きます。
欠けたりひび割れたりした瓦をそのままにしておくと、落下してきて事故になる恐れがあるため、早めに葺き替えを検討した方が良いでしょう。
屋根の葺き替えでよく使用される屋根材の種類
屋根の葺き替えを行うときは、以前と同じような素材を買い替えることもできますが、流行や好みによってまったく異なる素材を試すのも良いでしょう。屋根材の種類は実に幅広く、質感も色合いもさまざまです。
屋根の葺き替えで使用されることの多い屋根材は、次にあげる6種類です。
化粧スレート
セメントに繊維を混ぜ合わせて作られた屋根材で、「コロニアル」とも呼ばれます。薄い板状のため日本瓦に比べると重さが4分の1から3分の1程度しかないうえ、安価です。耐久性やカラーバリエーションがあることから取り入れやすい素材でもあります。
寒暖差が少ない地域などストレスのかかりにくい状態であれば30年前後はもちますが、20年を目安に葺き替えると良いでしょう。2005年以降に作成されたものは原料にアスベストを使用していないため、多少寿命が短くなっています。
天然スレート
「粘板岩」とよばれる岩石を使った屋根材です。防水性や防火性に優れていて、ヨーロッパでは古くから屋根材として使用されてきました。
自然素材のため、それぞれが異なった風合いをもっており、デザイン性を求める方に向いている素材です。
耐用年数は化粧スレートよりも長く、20年以上もつでしょう。もともとの素材に耐水性があり、防水のための塗装も不要です。
ただし天然スレートは重量があるため、耐震性を考慮した建て方が必要になる場合があります。
アスファルトシングル
アスファルトで作成された屋根材で、柔らかくカラーバリエーションが豊富です。価格も安い部類に入り、軽量かつ耐震性に優れていますが、日本では施工例が少ないため対応できる業者は多くありません。
需要自体も高いとはいえず、定期メンテナンス時の業者探しの苦労を考えると積極的に採用したい素材ではないでしょう。30年前後の耐用年数のほか、10年単位の塗装メンテナンスも必要です。
ガルバリウム
アルミと亜鉛で作られた金属製の屋根材です。近年の金属屋根の中では主流といわれる素材で、日本瓦と比べると重さはおよそ6分の1程度しかありません。
金属製のため地震によるひび割れに強く、価格も安価です。カラーバリエーションも豊富でメリットが多い屋根材ですが、水平な屋根では雨水が溜まりやすいため設置できる屋根に制限があります。
30年前後を目安に葺き替えるほか、10年単位で定期的な塗装メンテナンスが必要です。
セメント瓦
セメントや砂を素材に使用している瓦です。安価で大量生産しやすいことから、高度経済成長期の住宅建設が活発な時期には数多くの家屋で使用されました。
日本瓦とは異なる質感で、デザイン的には洋風の屋根に向いています。従来は安価で手に入れられましたが、耐用年数が日本瓦に比べると短いデメリットがあるため、近年は需要の低下にともない高価です。
耐用年数は30年~40年前後ですが、お手入れ状況次第で塗装剥がれによる吸水率の上昇やコケの発生など、見た目の問題が現れる可能性があります。
日本瓦
日本瓦は国内の多くの住宅で採用されている屋根材のひとつです。重厚感のある外見のとおり重量があるため耐震性は高くありません。台風時も強風で外れるおそれがあります。
工事費用など初期費用が高額となりますが、耐久性に優れておりメンテナンス頻度を抑えたい方におすすめです。耐用年数は50年~100年程度で、セメント瓦のように塗装での色付けを行っていないため、色あせもなく美しい外見を保ってくれます。
屋根の葺き替えで行われる作業とその費用
高所での作業となる屋根の葺き替えは、専門業者に依頼しましょう。この項目では屋根の葺き替えの作業内容と必要な費用について紹介します。
主な作業内容
工事期間は屋根の大きさや状態によってさまざまです。10日前後が平均日数ですが、工事個所の特性上、雨が続く時期には日数が増えることもあります。
葺き替え工事の主な流れは、以下のとおりです。
・足場の組み立て
・既存の屋根材の撤去
・下地を点検・補修
・野地坂の設置
・防水シートの取り付け
・新しい屋根材の設置
・棟部分の板金処理
・仕上げ
・足場の解体
築年数の古い家の場合は瓦の下に「葺き土」と呼ばれる土があり、既存の屋根材とともに撤去されます。状態に合わせて下地の補修を行った後は、野地坂や防水シートで屋根の強度と防水性を上げ、いよいよ瓦の設置です。
板金処理やこまかい部分の手直し、掃除などの仕上げ処理を行って工事完了です。
屋根の葺き替えにかかる費用
屋根の葺き替えにかかる費用は、屋根材の価格によって異なります。
・アスファルトシングル:100万円~
・ガルバリウム:140万円~
・瓦:140万円~220万円
上記価格はあくまでも目安です。屋根の劣化状況や葺き替える範囲、建物の立地によって工事費用が変動します。
実際の費用を知りたい場合は、業者に屋根の状態を見てもらって見積もりを出してもらいましょう。
そのほかにも、以下の費用が追加でかかります。
・防水シート張り替え費用:500円~1,500円/平方メートル
・アスベストを使用した屋根の処理費用:20,000~85,000円/平方メートル
築年数が古い住宅の場合、アスベストの入った屋根材を使用していることがあります。アスベストの入った屋根材を撤去する際は、アスベストが飛散しないように作業しなければなりません。
そのため、アスベストを使用した屋根の葺き替え工事は「石綿作業主任者」という資格をもった業者のみ行えます。自宅の屋根にアスベストが使われているかわからないときは、見積もりを依頼する際に業者に確認してもらいましょう。
屋根を葺き替えるメリット
劣化した屋根を撤去し、新しい屋根に取り替える葺き替え工事は、建物全体の耐久性を高める効果があります。
ここでは、屋根を葺き替える具体的なメリットを紹介していきます。葺き替え工事の費用対効果が気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
屋根の耐震性が上がる
葺き替えで軽量の屋根材に変更することで、建物の耐震性がアップします。
瓦などの重量のある屋根材を使った建物は重心が高いため、地震が来たときに揺れやすくなります。さらに建築基準法が改正された1981年より以前に建てられた住宅は、現在の耐震基準を満たしていないため、倒壊の危険性が高いのです。
軽量の屋根に変えると、重心が下になって揺れにくくなります。そのほかにも、柱や基礎への負荷が軽減されるため、建物全体の寿命も伸ばせるでしょう。
ルーフィングシートを新しくできる
ルーフィングシートとは、屋根の下に敷いている防水シートのことです。一般的な住宅は、屋根とルーフィングシートによって雨漏りを防いでいます。そのため、屋根のリフォームをする際は、ルーフィングシートの劣化にも気をつけなければなりません。
屋根材に耐用年数があるように、ルーフィングシートにも耐用年数があります。そのため、ルーフィングシートの耐用年数が過ぎてしまうと、はがれたり破れたりして雨漏りが起きやすくなってしまうのです。
葺き替え工事では、既存の屋根材を撤去する際にルーフィングシートを新しいものに交換します。ルーフィングシートを張り替えることで雨漏りを防げるため、建物の耐久性がアップするでしょう。
葺き替え工事の費用を抑えるポイント
屋根の葺き替えは面積や使用する素材によっては、100万円以上費用に差が出るものです。そのため耐用年数や定期メンテナンスの手間も視野に入れ、最適なコストバランスの屋根材を選ぶ必要があります。
また、葺き替え工事の費用を抑える対策方法も上手に活用しましょう。
補助金制度を活用する
住宅関連の工事は、条件を満たしていれば補助金が適用される場合が少なくありません。屋根の葺き替えも対象となる補助金制度もあるため、事前に適用対象となるかどうか確認しておくことをおすすめします。
条件は、たとえば耐震対策や断熱性の向上といった、住宅機能をアップさせるものなどです。国が行っている事業のほかに都道府県や市町村単位で独自に実施しているところもあります。行政への問い合わせはもちろん、工事を依頼する業者にも補助金制度の利用が可能かどうかを確認しましょう。
基本的に、補助金の申請は工事開始前に済ませなくてはなりません。
本当に葺き替えが必要なのか調べてもらう
屋根材の耐用年数が近づいているからといって、即座に工事が必要とは限りません。まずは本当に葺き替えが必要なのか調べてもらいましょう。専門業者の多くは、調査のみであれば無料で引き受けてくれます。
たとえば雨漏りなどのリスクがない軽度な破損や劣化程度では、部分的な補修で十分です。既存屋根材をすべて剥がす葺き替え工事を依頼すると、費用が無駄になってしまいます。
おうちの御用聞き家工房では、屋根の簡単な補修も承っています。高い技術と知識を有するスタッフが、電話一本で最短即日にお伺い可能です。
コーキング剤を用いて割れた瓦を補修するなど、屋根のトラブルにも幅広く対応しています。まずはぜひ一度おうちの御用聞き家工房へご相談ください。
複数の業者に見積もり依頼をする
最適な費用相場を知るためには、複数の業者で相見積もりを行うことが重要です。一社のみでは良心価格なのか相場よりも高額なのか判断が難しく、損をしたりずさんな工事をされたりするリスクがあります。
悪徳業者は極端に高額もしくは安価の価格を提示する場合が多く、複数の業者で見積もりを取ることにより優良業者の見極めにつながります。
理想としては、最低でも3社以上の業者に見積もりを依頼しましょう。
まとめ
長く住んでいる家は、内装だけではなく屋根の葺き替えも検討しなければなりません。一般的に使用されている屋根材の多くは30年前後が耐用年数のため、築年数が古ければ古いほど破損の可能性があります。
ただし、破損状況によっては一部の簡単な補修のみで対応することが可能です。大がかりな屋根全体の葺き替えは工事日数も費用もかかるため、まずは業者に屋根の状態を確認してもらうことからはじめましょう。
簡単な補修であれば、専門スタッフが最短即日でお伺いするおうちの御用聞き家工房にぜひご相談ください。